心臓は伸び縮み(収縮・拡張)を繰り返して全身に血液を巡り渡らせるポンプのような役割を果たしています。心臓が収縮するたびに血液が血管(大動脈)に送り出されますが、この瞬間には血管に大きな圧力がかかります。
この時の圧力が収縮期血圧、俗に言う「上の血圧」となります。そして送り出された血液が全身をめぐって戻ってくると心臓が拡張し、この瞬間には血液は血管内をゆったりと流れますが、この時血管にかかる圧力が拡張期血圧、俗に言う「下の血圧」となります。
その名の通り血圧が高い状態です。ではどのくらいの数値から高血圧になるのかといいますと、ガイドラインでは収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上と定義されており、収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧85mmHg未満が正常血圧、その間が正常高値血圧と定義されています。
なぜこの基準になったのかといいますと、血圧が高い人ほど心臓・血管系の病気になりやすく死亡率が高まりますが、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上になると急激にその率が高まることが調査で分かってきたためです。厚生省の調査では約3400万人が該当するとされており、そのうち治療を実際に受けているのは900万人程度とされています。
⚫︎本態性高血圧 原因がはっきりしていない高血圧のことで全体の9割を占めます。遺伝、塩分・アルコール摂取過多、喫煙、運動不足、ストレスなどが要因であると言われています。
⚫︎二次性高血圧 ホルモンの分泌異常や腎臓への動脈が狭くなることで高血圧を来すこともあります。特に若年者の高血圧ではその可能性も考えなければいけません。
診断をつけるには血液検査なども必要になりますが、原因が除去されれば血圧も正常化する可能性が高いです。
⚫︎白衣高血圧 普段の血圧は正常なのにも関わらず、医療機関などで医師や看護師が測定すると血圧が高くなってしまうケースです。一般的に治療は必要ないことが多いです。
⚫︎仮面高血圧 白衣高血圧とは逆に、医療機関などでの測定値は異常がないにも関わらず、自宅での血圧は高くなってしまうケースです。
血圧だけであれば測定器で計測するだけで数値はわかります。ただ、高血圧のみならず合併症の有無にも十分気を配る必要があります。
⚫︎血液検査 高血圧はホルモン異常による二次性のケースもありますので、特に若年者の場合は血液検査を行って調べる必要があります。また脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や腎機能障害の合併がないかどうかも合わせて調べる必要があります。
⚫︎心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査 心臓疾患の合併がないかどうか調べます。
⚫︎頚動脈超音波検査 頚動脈の狭窄がないかどうか、動脈硬化の進展具合を調べます。
⚫︎血圧脈波検査 血管の硬さや血管の詰まりを調べる検査で、動脈硬化の進展具合がわかります。手足の血圧を測定する簡単な検査で、5〜10分程度で行えます。
⚫︎若年者・中年者 130/85mmHg未満(診察室血圧)、125/80mmHg未満(家庭血圧)
⚫︎高齢者 140/90mmHg未満(診察室血圧)、135/85mmHg未満(家庭血圧)
⚫︎糖尿病患者・慢性腎臓病患者・心筋梗塞患者 130/80mmHg未満(診察室血圧)、125/75mmHg未満(家庭血圧)
⚫︎脳血管障害患者 140/90mmHg未満(診察室血圧)、135/85mmHg未満(家庭血圧)
降圧目標は年齢や合併症の有無・種類によって変わってきます。昨今は多種多様な降圧薬がございますが、当クリニックでは循環器内科医の視点から、ただ血圧を下げる目的のみならず、患者様個々の病状に合わせた処方のご提案をさせて頂きます。
高血圧による自覚症状はないことが多く、ついつい甘く見てしまう場合も多いかと思います。しかしながらそのまま放置してしまうと動脈硬化が進んで上記のような重篤な合併症をきたす恐れもありますので、血圧が高い場合には早めの受診をおすすめいたします。